ストロボみたいに

ミルクティー のめません

日記③ 椿の花

分かっている。私は君から卒業しないといけないんだ。もう、いい加減。

話を聞いてくれたから。私を受け入れてくれたから。いつも褒めてくれたから。勝手に勘違いした。この子しかいないみたいな気分になって一緒に心中したかった。違う、なんとなく、ただなんとなく、私の話をするもっと前から、別にそんなに仲良くなかったあの時から、ある日、ある夏の日に、「××ちゃんと海に行ってそのまま帰らず死にたいな」って思った。なんとなく、おんなじ魂の持ち主のような気がした。きっとこの子もどこか空虚で何かに飢えてるような、そんな気が。勝手にしていたのだ。

でも君はあの子と相思相愛で、いつからか気持ち悪いくらい二人だけの世界みたいなの醸し出すようになっちゃった、らしいから。その時には私はもうあそこにはいなかったし。二人の空気が異様になっていくのがキモくて、ウザくて、心底憧れた。私もそういう、唯一無二みたいな女の子が欲しかったから。

私が書いた話を褒めてくれた。凄いね、って本当に上手いね、って。天才だねって。それがきっといけなかった。

でもそうじゃなくても、今思い返したらやっぱり元々惹かれていたし、純粋に、性格とか、気配りができるところとか、ふとした言動とか、そういうの、大好きだし

友達になりたい

いつか、いつか全部抜け落ちて

本当に君を愛せるまで

あの子への憎しみとか、君の嫌いな部分とか全部いつか、いつか消えてくれて、私の心も穏やかになって、誰も求めなくて済むように、自立して、その時が来たら、そんな日が来たら、今度こそ友達になりたい

生まれ変わらないと無理かもしれないけど

本当は初めて会った時からあの子のこと苦手だし、今はもう結構嫌いなんだよ

真っ直ぐなキラキラとか、努力とか、人に囲まれてる感じとか、綺麗事とか、本当、大っ嫌いなんだよ。その癖繊細な所とか考えすぎる所とかもあって、そういうのも持ってる感じが本当に大っ嫌いなんだよ。綺麗なだけでいろよ。明るいままでいいだろ。そっちまで奪わないでくれよ。どっちも持ってるなんて卑怯だろ。でもやっぱり、孤独ではないじゃないか。人に愛されるし、何よりあの子に求められてる。大嫌いだ。そういう所が。

あの子と、彼氏と、私。三人のうち誰か一人だけ助けられます、あとは死にます、ってなったら君はきっとあの子を選ぶだろうね。間違いなく。私は一人でも生きていけるから。

私に執着されて、本当は気持ち良かったくせに。執着って甘いんだよ。べつに好きじゃない人間からの物でも、優越感くらい満たしてくれるから。本当は気持ち良かったくせに。気づいてないかもしれないけど、そうなんだよ。

相談とか、今までいっぱい乗ってもらってたから返してたけど、やっぱりあの子は越えることができないんだなって、その度に思ってた。で、今回それが決定的に現れた。ああ、そうなんだって。やっぱりそうなんだって。でもさ、その名前ダサいからやめた方がいいよ。君ってどこにいるの?姓名判断くらいで、そんな運勢くらいで、君は君の好きな物を手放してあの子を選んでしまうの?違うよね。きっと、君があの子を選んだんだ。自分の好きより、自分より、君があの子を選んだんだ。あの子のことが好きだから。自分の好きな物より、ずっとずっと特別だから。あの子のことが。

一番の理解者ってよく言ってくれたよね、私の事。でも同じセリフあの子にも言ってた。なんだ、って思った。そっか、って思った。

喧嘩して、同じ夢を目指して、たぶん全部晒け出して、晒け出せて。そりゃ特別になるよね。私はそこには立ち入れない。

どうか粉々に砕け散りますように。どっちかが上手くいって、どっちかが失敗するとか、そういう絶望が降りかかりますように。それくらい願わせてよ。性格悪いんだよ私。幸せなんて願えないよ。負けてんだよ。恋じゃないけど、失恋じゃんこんなの。好きな相手の好きな相手恨んで何が悪い。壊れてしまえクソッタレ。

綺麗事なんか大嫌いなんだよ。努力が全部報われると思うなよ。絶望を知ってから言え。本物の地獄を味わってから言え。それでも、その時も、同じセリフが言えるかよ。

腐ってんじゃねぇよ。見てきたから言うんだよ。そんな綺麗じゃないって、綺麗なだけじゃ上手くいかないって。綺麗な気持ちのままではいられないって。信じるとか馬鹿みたいなこと言ってんじゃねぇよ。やってんじゃねえよ。

大っ嫌いだ。

こういう気持ちがある限りは、君には近づけない。だからもう、その名前で君を手放す決心が着いたよ。こんな時にこの仕打ちかよって思ったけど、今だったんだよねって、そういう時期が来たんだって。春だしね。過ぎていくし、変わっていくし、終わるんだ。

べつに連絡とらなくなるわけでもないし、二度と会わない、とかじゃないけど

気持ちが変わったの。本当に今度こそって、上手くやれるかな。やるの、今回は。たぶんなんかちょっと違う気がするし。今までと

自立する時が来たのだ。

あの子も、あの子も、あの子も。母親もだし。自分で生きていかなきゃ

そうして本当に選ぶ文章にこそ、意味がある。

あの子に見てもらいたくて、承認欲求のために書くんじゃない。「書きたい」って思って、書きたいって思った時に書けばいい

書かなきゃって最近ずっとしがみついてたけど、そんな無理やりじゃなくて。べつにそれも悪いことじゃないんだけど、もっと、ただ、人生最後に何をしたいか、とか、何をして生きていきたいか、って考えた時に、「書きたい」って思う、その気持ちだけで

君もいなくなって、明日からべつに生活の不安とか、お金のこととかそういうの全くなくなるとする。それでも私は何がしたいかって、何をするかって、きっと文章を書くと思う。今と同じだ。力尽きて、横たわるとき。寝台の上で、ペンを握っていて、それが力が抜けた拍子に、最後の最後、手のひらから零れ落ちて、花びらが散るように、椿の花が首からボタリと落ちるように、終わる。私を囲んで、辺り一面紙が散らばる。最後の最後まで、書き続ける。書き続けたことの証明。生きた証。生き様。紙にはいくつもの文章が綴られていて、そこからどこへでも行ける。春にも、夏にも、朝にも、夜にも。どこへでも。あの子の所へ行ける。物語の中の、あの子の所へ行ける。

そうやって終わりたいのだ。私の国で、ピンク色に染まった、お花とかレースとかリボンとかかわいいものいっぱいのこの部屋で、今よりもっとかわいいこの部屋で

それまで、君には会えない。きっとまたいつか、いや、今度こそ、友達になれるかもしれない

けど、そうじゃなくてもいい

やっと手放す決意ができたから。よかった。

そうだよね、って。君と私は心中しないし、運命でもなくて、唯一無二でもなくて、それぞれ別の大事な特別があって、君はきっとあの子で、私は文章なのだ。それが分かっただけ。最初からそうだったものが、今ハッキリ見えるようになっただけ。よかった。

憎しみはあるけど、悲しいとか、羨ましいとかそういう気持ちは本当、めちゃくちゃ全然あるけど、前を向こう、ともおもう。だから、いいや。

君はそういう人だった。たぶん、君はあの子がいないと駄目になる。本当に、生きていけなくなる。それくらい誰かがいないとダメで、べつにそれが弱いとかじゃなくて、ただ、根本的な部分が私と違ったってだけで。私はやっぱり孤独だから。孤独を選ぶから。君じゃなかったし、そういう意味で、君に求めてたし。勝手な押し付けで、本当に君を好きなわけじゃなかった。でも、やっぱり君だから、っていう部分はちゃんとあって。最初がそうで…始まりがそうで……。

 

だから

さようなら

君と別々の道を行く

君はあの子を追いかけて、もしかしたら君の望み通りあの子と二人で幸せになれて

私は全然違う世界で

一人、優雅に言葉を紡いでいる

きっとそういう風になる

何年後かに、ご飯とか食べに行くかもしれないけど、それももう、分からない

そうでもいいし、そうじゃなくてもいいなって思う。私が苦しくなければいい。私の理想に君を巻き込むのも、違うから

応援してるし、幸せを掴んでほしい。その気持ちは変わらない

活躍とか、耳に入ってくるかもしれないから、そういう時ふっと思い出して、「ああ、頑張ってるんだなあ。頑張れ」って思いたい。そのくらいの、気持ちになりたい

そうして次の瞬間にはもう君のことを、君達のこを忘れて、自分のやるべきことへと帰っていく。そういう風になりたい。そういう風になれるまで、君とお別れ。この気持ちもいつか物語にする。だから無駄じゃないし、きっとよかったって思える。私はそれができる。そうする力がある。私にはそれがある。

 

さようなら

元気でね

またいつか