ストロボみたいに

ミルクティー のめません

日記⑮ 薬

生きがいが一つ消えた。辿り着いてしまえた。

ここからどうしよーっていうかべつに何も考えてないけど普通に休むけど、そうだね終わっちゃったな。

雨が上がるのを待って、この部屋の塵を全部持ってってもらって、そしたらあの町に帰ろうと決めた。ずっと帰りたかった。帰りたいって思ってた。今一番何がしたいか考えて思い浮かんだのが町に帰ることだった。じゃあもうそうしよう、って。

何気に引っ越してから帰ってないしね。去年あれだけずっといたから恋しいよ。そうじゃなくても好きな町だけど、もう一度帰る場所になっちゃったら、もう、やっぱりここが好きなんだってかなしいくらい思い知らされた。

私の町はさみしい場所だ。仄暗くて、閉鎖的でかなしいくらい美しい町だ。何も無い。人骨が埋まった公園と、かつて境界線だった川。切り崩されていく山はそのむかし、宝石が眠っていた。悪い大人が住むお城。彼が最期を迎えた地。抜け殻のターミナル、シャッター通り

私は寂しい町で育ったから、寂しくて悪い町で育ったから、寂しい物が大好きだ。

いつかこの町によく似た場所で死ぬだろう。この町がいいけど辿り着けずにくたばる気がする。

 

 

ライブに行くのは久しぶりだった。本当はもっとライブに行きたい。好きなアーティストもアイドルも沢山いるからこれからはもっとその人達に会いに行きたい。そういう人生にしたい。

「楽しい」とか「凄い」とかそのまま直球に思うだけでいいのに、私はライブですらあれこれ色々考えて受け取る。頭の中を文字の羅列が駆け巡る。これはもう何をしていてもそうだ。ご飯を食べていても、お風呂に入っていても、洗濯物を干していても、街を歩いても、買い物に行っても。ずっと考え事をしている。だから何もしてないのに凄く疲れてる。しんどい。「こうやって言語化しよう。こういうこと言おう」とか考えちゃって、ライブ自体は普通に楽しんでるし、めちゃくちゃ感動してるし、感動してるからこんなに文章が思いつくんだけど

ライブくらい真っ直ぐ何も考えず楽しめんのかい、と思って、

でも心底楽しそうに踊るあの子のパフォーマンスを見ていたら「まあべつに悪いことではないか」と思えた。

 

私は自分の性格は大嫌いだけど自分の感性は凄く好きで、性格は本当に本当に好きじゃないけど、それだけは、好きでいられるっていうか、

何を「私」というかにもよると思う。

性格の話に対しての「私」なのか、能力や才能に対しての「私」なのか

色んな私がある。

色んな事に対しての「私」がある。

私のセンスは好きだけど、性格は好きじゃない。性格はまじで好きじゃない。めんどくさいし凄く性格が悪い。性格は良い悪いじゃなく合う合わないだと思うけど、私は私に対してはほんと性格悪いなと思う。でもそこも愛せ受け入れろとか思ってるのが本当にどうしようもないと思う。でもたぶん性格なんてそんなものだ。その上で、私は私を性格が悪いと思うし、私の性格は好きじゃない。

 

だけど、感性に関しての「私」は大好きだ。私の感性は本当に好き。素晴らしいと思う。もう私は文章だけ書いてればいいと思う。あと普通に日常の着眼点が面白い。自分で自分の発想に「よくそんなこと思いつくな!」と思う。めっちゃ楽しい人。

 

なんか色々、本当に色々考えるし思うけど、毎日どうしようもないけど、私は私の文章だけは良いと思う。文章だけは、誰がなんと言おうと本当に良いと思う。良い文章を書くと思う。それしかない。それさえあれば。それがあるから。

 

告白をした。中学三年生の時の担任の先生に。恩師だった。私が文章を意識するきっかけは彼の言葉だった。同窓会で五年ぶりに会って、言おうと決めていたことを、伝えた。

 

「いつか私が本を出す時、先生、解説を書いてください。」

 

担任は「おう」と言った。馬鹿にしなかった。馬鹿にする人ではないし、馬鹿にされるとは思ってなかったし、むしろそういうの大好きだろうなと思っていたけど、驚くほど呆気なく担任は頷いた。顔色一つ変えずに。きっとあの頃の、生活ノートの「今日の記録」へのメッセージと大して変わりはないのだろう。全てにおいて愛情を持って接してくれる人だったから、今更特別に思うこともない。

自由で、大人に合わない大人。大人っぽくない大人。でも子供でもない。少年のようではあるけど。おもしろい、大人。大人になるのは、長い時間を生きていくことは面白いことなのだと彼を見て知った。

 

 

これが私の夢。

今一番叶えたい夢。叶えたいっていうか、叶えなきゃいけないっていうか。「書いてください」というのはほとんど「そうします」という宣言だった。自分への戒めのような物だ。私は書かなければならない。必ず成し遂げなければならない。そうじゃなきゃ死ねない。その前にくたばるなんて許さない。別にどんな風であれ形にすることはできる。実際、去年やり遂げだ。どんなに拙くても、技術がなくても、ちゃんとした形じゃなかったとしても。あれは確かに私の最初の作品だった。初めて自分の手で完成させた、大事な大事な作品なのだ。

 

「舞台で短編集を出しました」と言ったら、「見せろ」と言われた。めちゃくちゃ笑った。「持って来てませんよ」と言ったら「勤務先の学校に送れ」と言われた。

解説を書いてほしいと言ったら、「おう」「××中(自分の勤務先の学校)に連絡しろ」と言われた。「海鮮丼奢ってください」と言ったら「おう。いいぞ」と言ってくれた。

なんでも肯定してくれる。

それがどれだけ嬉しかったか。

 

 

また頑張るそのために今は休む。休みたい。疲れた。散々頑張ってきてきた分休んでるんだから、何も悪いことじゃない。そう、自分に言い聞かせている。

町に帰って、散歩して、大好きな鯛焼きを食べて、夏だからアイスコーヒーも飲んで、風鈴祭りに行って、犬と戯れて、一人で花火もしたい。河川敷で小さく蹲って。

 

 

あの子とチェキを撮るために、長い列に並んだ。後ろのお兄さんが話しかけてくれて、一緒に待ち時間あの子のことを話した。人と話すのは久しぶりだった。私は病んでいる(のとはまた少し違うが大体そうな)のでツイッターは誰とも繋がらないようにしている。一度に大量に呟くし、それで引かれたら悲しいので。じゃあ最初から無い方がいい。いなくなるのは寂しい。あきらめたら平気だ。けど別に人と話すのは嫌いじゃなくて、全然うれしくて、だから話しかけてもらってすごく嬉しかった。本当は語り合える相手がいるのいいなあ…と思っていたから。

そうして初めてあの子を好きな人とあの子のことを話せたのだ!すごい!なんてこと!

私がファンの人と話すあの子を見ながら、「××ちゃん、かわいいですよね(⑉ ◜𖥦◝ ⑉)」と言ったら、「…かわいいです( ˶'-'˶)」と言ったお兄さんがかわいかった。なんて世界平和な会話。

別のメンバーのファンの方に誘われてそのグループを見に行って、それが出会いだったらしい。なんて素敵なんだろうか!

「射抜かれたんですね!」と言ったら、笑って「可愛いなって思って」と答えてくれた。恋だ!

 

 

あの子の地元だったからお友達が沢山遊びに来ていた。それを遠くから眺めた。あたたかい気持ちになった。

「友達が見に来るのってどうな気持ちなんでしょうね。やっぱり恥ずかしいのかな?」という言葉を聞いて、私は

 

本当は駄目だと思うけど、「ここだけの話」と言って、自分の事をすこし話した。

 

嬉しいと思いますよ。

ここだけの話なんですけど、私、この街でアイドルやってたんです。私も友達が見に来てくれたことあって、凄く嬉しかったです。

 

そうなんですね。でも、アイドルの現場って結構(アイドルも見に)来ますよね。

 

そうですね。

アイドルはアイドルが好きです。

 

 

本当に短い間だったし、大したことはできなかったけれど、それでも私の事を好きになってくれた人がいた。最後の時、「一回話したらまたすぐ会いたくなるくらい素晴らしい人でした」と言ってもらった。それはいつも私が私の好きな人に思うことだったから「えー!恋じゃん!」って思った。何がどうして、私の何がそんなに刺さってくれたのか分からないけど、本当に嬉しかった。

 

(余談だけど、その人は私の大好きな超歌手のメジャー1stアルバム記念イベント(2014年)に行ったらしい。私より全然古参!!羨ましい!!私のブログを読んで特典会で教えてくれた。「初めて会いたいと思ったのは何かすごく会いたくて話したくて 引き寄せられたと思う」と聞いてやっぱり…通ずるものがあるのか…?!!!と思った。めっちゃお気楽な脳みそ。だけどそういうのはあるんだと思う。そういう風に思っていた方が人生は楽しい。からそう思うことにする。)

 

 

ステージに立つ彼女たちは本当にキラキラしていて、一体どれほどの努力を重ね、プレッシャーや不甲斐なさを感じて、それでも立ち上がってこの景色を見るそのために、そのためだけに、歩みを止めないで、傷付きながらここへ来たんだろう、って

これから先も、繰り返す。続ける限り。終わりまで。

今までだって散々頑張ったのに「もっと頑張る」のだ。ずっと、ずっと。その途方も無さに対して今日の光は本当に一瞬で、でもこの一瞬を知っているから、もっともっと、やるしかない。

 

アイドルは戦士だ。戦っている。それぞれの武器で。衣装やヘアアクセや髪型やメイクで武装する。必殺技を繰り出す。ウインクも指ハートも攻撃力MAXで。HPは減り続ける。だけど高揚してる。その度キラキラする。キラキラする。強い輝き。必死に戦う様が美しい。その子にしかない武器で、技で、誰かが射抜かれる。クリティカルヒット!君の勝ち。

 

 

「衣装本当に似合ってる!天使みたい!」と伝えたら、「やった〜天使になれた!」と笑った顔が本当に天使だった。天使だった。

ほくほくしながら夢から覚めた。思い入れのあるライブハウスだったので嬉しかった。

そしてこの場所も。

私のふたつめの高校がこの街にある。大都会まで電車に乗って、そこからバスで通っていた。通信制なのでスクーリングの時以外ほとんど行かなかったけど、それでもしばらく通った場所だ。

ライブハウスから本当にすぐ近く、歩いて十分くらいの場所にあるのでせっかくだから足を運んでみた。当時聴いていたアルバムを再生する。ポップに絶望してる歌。都会に出る時絶対聴く歌。どこへだって行けるって言ってくれる歌。抱きしめて抱きしめて今もずっと離さない私の大切。あの頃、これらにしがみついてなんとかこの場所まで来ていた。

学校の前まで来るとさすがに込み上げてくるものがあった。苦しかった。ちょっと泣きそうだった。泣かなかったけど。

 

苦しみながら朝マック胃に詰め込んだな、とか。なんにも分かってない先生と、凄く支えてくれた先生がいたな、とか。本当に苦しかったな。頑張ってたな。スーパーでバイトしてたな。そこで先輩に出会ったな。まさか同じ日のライブ行く予定だったなんて。色々喋ったな。次の日ライブの感想語り合ったな。野菜を袋詰めしながら、早くまたチェキ撮りたいってずっと言ってたな。

 

それから私はガクンと調子を崩し、大量に薬を飲んで、それも二回、閉鎖病棟に入院することが決まった。

 

秋だった。

高校二年生の、秋。

そこからも色々あった。良くなるために入院した病院で男性の准看護師に酷い目に遭わされるし(翌年逮捕されてた)、母親が宗教に入るし、もうめちゃくちゃ

入院してた頃も、スクーリングに通ってた。なんとか、なんとか。ほんと、すげぇ頑張ってた。

 

 

家のために頑張って、報われなかった。何にもならなかった。頑張ったら壊れた。だからもう頑張りたくない。本当に疲れた。

でも、頑張ったことには変わりない。どう考えても、あの頃私は本当に頑張っていた。ただの小学生で、子供で。

 

この傷は自分が思っている以上に深い。深いとは思っていたけど、それより、もっと、本当にもっともっと、凄く、深いようだった。根深い。私の苦しみ。

 

私は何も持ってないけど、でもこの苦しみは私の物で、私にしかない物で、私にしか分からないから、この苦しみは私にしか分からない。だから、じゃあ、これも私の物なんじゃないかって、最近閃いた。この苦しみをどうにかすれば。

文章を書いた時だけ、自分の事を肯定できる。息ができる。生み出してはじめて、ようやく自分の存在を認められる。

私は、私の性格は好きじゃないけど、文章にさえしてしまえば何でも「良い」。「良い」になるのだ。性格の悪い話でも、物語にすれば大好きだ。だって私がいちばん、私の文章の虜だからだ。私は文章になりたい。文章になるために生きている。肉体は死んだら朽ち腐るのみだけど、魂は遺り続ける。形にして、遺したら。その時、私はようやく、はじめて、文章になるのだ。私が望んだ私になれるのだ。ずっと夢見た、私に。この身体は私が文章になるための道具だ。私の文章を世に放つためだけの手段に過ぎない。いつだって、本当にいちばん大事なのは、心。あとは二の次。

 

全部文章にする。

この毎日も、この感情も、この苦しみも、愛も、全部恋みたいに書いてやる。酷い夢だ。

私は何も持ってないけど、持ってないから作ることができる。作ることができる。それは、得意だ。それがあれば大丈夫だろう。

 

あの日に飲んだ薬の味は何一つ忘れていない。全部覚えてる。やまない頭痛も、流れ続ける涙も、コップを滴る水滴も、お腹に溜まってゆく水の重さも、空の明るさも、時計の秒針の音も、木のテーブルの滑らかさも、全部、全部。

 

違法ドラッグが薬になってしまう人達。私はそっち側へは行かない、けど、それくらいの強さは、理性は捨ててない、けど、ギリギリで生きている。本当は危ない奴なんだ。みんな知らないけど。大人しくしているけど。何も話さないけど。ずっと中二病だし。

けどね

中二病からしかアイドルも魔法少女プリキュアも少年漫画もヒーローも生まれなかったんだよ。イタい病は必要だよ。だから実力のある中二病になる。

 

鬱が、絶望が、暗がりがキラキラするんだって、明るくて綺麗なものだけがキラキラじゃないって、「そんな物」って蔑まれる物が美しいって教えてあげる。私の命を使って証明してやる。たぶんその為に生まれてきた。何かを生むために。

 

 

私は、超強くてカッコいい、神様になる予定の、かわいい普通の女の子。