ストロボみたいに

ミルクティー のめません

日記⑥ もう戻らない幸せ

昼下がりの午後の公園で、子供達とその親が無邪気に遊ぶ穏やかな光景をみつめながら、大森靖子さんの『青い部屋』を聴くのがとてつもなく好きだ。青い部屋を聴きながら、その圧倒的な優しさとあたたかさと、幸福と、実は脆いという真実を目の当たりにしながらもう戻らない幸せを思うのがとても好きだ。

 

私によく似た名前のたこ焼き屋さん。そう、この名前はいつの日かにラジオのハンドルネームにした。そしたらその日番組に送ったメッセージを靖子ちゃんに読んでもらえた。特別で、思い出のある名前。立ち寄らずにはいられなかった。スーパーでお団子(あんことみたらし)とほろよいももを買う。お花見がしたいのに桜がみつからない。この公園のこの樹はなんの花が咲くのだろう。蕾だから、ひょっとしたら桜なんじゃないかと思うけど私の住む街ではもう、ちらほら桜は開花しているらしい。

と、思っていたら桜あった。この公園の樹はやっぱり桜だった。まだ本当に一部だけど、桜が咲いている。知らなかった。桜探ししなきゃ、なんて思っていたけどすぐそばにあった。だよね。日本の公園にある樹なんて大抵桜だし。素敵なことだよ。

 

そうやって昼間からお酒を飲んで、美味しいたこ焼きとお団子を食べて過ごした。たこ焼きは本当に美味しくて、公園選びに手間取ってしまったばっかりにアツアツの状態で食べれなかったのが悔やまれる。次はきっと、焼き立てを食べよう。美味しかったから今度弟に買っていこう。弟が好きそうだ、と思った。

子供がいたから。姉弟がたくさん、遊んでいたから。あの日々を思い出した。だからきっと、弟の事を思ったのだろう。

去年まではできなかったこんなお花見。お酒を飲んで、一人で。あの子ももうじき一人になる。私よりずっとずっと生きていけるだろう、立派な人だ。何も心配していないし、今度こそ自分の思うように、好きなことをして生きてほしいと思う。母の事も、私の事も、消してしまえるくらい、これからは、自分の人生を生きてほしい。生きれますように。

ごめんね。

ここを見つけた時はきっともう私はこの世にいない(と思いたい)し、届くかどうかも分からないけど、一応遺しておく。本当は手紙とか書けたらよかったんだけど、今それをするのは私のエゴだから

 

靖子ちゃんがリリイベでPARCOに来てくれたあの日、ナナコレシールお渡し会の私の番で『青い部屋』が流れていた。それが、凄く嬉しかった。特別な歌だから。

大森靖子さんの曲を、きっとみんな色んな思いで聴く。それぞれ特別な気持ちがあってその曲が好きだ。私は青い部屋は特に好きで、初めて聴いた時から好きで、『絶対少女』のアルバムの中でもいちばん好きで、いちばん聴いたくらい、本当に特別な曲だから。きっとあの場にいる誰よりも特別な気持ちで聴いていたと思うから。全然勝手な言い方なんだけど、私はあの曲に「相応しい」と思っているし、だから、あの曲に選ばれたみたいで凄く嬉しかった。

 

 

だまされてもかまわない 絵が描ければよかった

老人ホームでの仕事はとても気に入っていた

 

ごうごうともえている 言葉を知らない男

曲がり角の奥たちこめる匂い ひきずられ歩く

 

子供が子供を育て 子供が子供を殺め

子供が子供と子をつくる 子供だけの青い部屋

そう子供の亡骸を壁にうめて絵を描いた

 

僕たちは似ているね 優しさがむくんでいる

いつでも笑って暮らすのにかわいそうだと言うんだろ

 

子供が子供を育て 子供が子供を殺め

子供が子供と子をつくる 子供だけの青い部屋

ぼくの手をとる母親が ぼくを選ばなかったから

ぼくがぼくたちを守る ぼくたちの明るい部屋

 

 

大森靖子青い部屋